ワインと言えば産地、生産者、ブドウの品種、作られた年代ばかりが話題になり、ワイングラスが話題になることは少なく感じる。ワイングラスの種類は豊富でワインの持つ特徴に応じてさまざまな形状が準備されており、ワインの味や香りの感じ方を左右するほどに影響力を持っている。飲み口部分の「リム」、ワインを注ぐ「ボウル」、持ち手部分の「ステム」、テーブルに触れる「プレート」と各部位で名称もあり、それぞれの造形美にも目をひかれる。スパークリングワイン、白ワイン、赤ワインとそれぞれの特徴を活かすボウルの形状があり、ステムの太さ一つをとっても持った感触で飲む前のワインを表現している。いつもワインと共にあるワイングラスにも注目してもらいたい、そのような思いからワイングラスが主役となる脇役のワイングラスシェルフを模索した。
ワイングラスを収納する方法として逆さまに吊されたワイングラスホルダーをよく見かけるが、効率的な部分が際立ちワインの持つエレガントな魅力と結びつかない。ワイングラスを主役とするためそのエレガントな造形美を主張することを考えた。まずはシェルフの手前側4方向にライン照明を設置し、透明なワイングラスに光源を照射することでその美しい輪郭を浮かびあがらせ視覚化し、ワイングラスにはさまざまな形状があることをわかりやすく表現した。中段に設置したモザイクガラスは、その柄がボウルの底やプレートに映りこみ、グラスの輝きに花を添える結果となった。またガラスを支える真鍮のバーは、グラスの繊細な美に合わせて細さの限界に挑戦し、厚さ10ミリという主張しない支えとすることができた。
美しく浮かび上がったワイングラスを目にすることで少しだけ豊かな気持ちになれる。
ワイングラスが主役となった今までにないシェルフによって自由な創造性が人々に広がることを期待する。