20年前に新築した1軒目の住宅が手狭になった50歳目前の御夫妻と成人した娘3人のための2軒目の住宅である。
敷地は1軒目の御自宅から徒歩30秒ほどの閑静な住宅街の一画、道路からは3メートルほど高い位置にある。
子育てを終え第二の人生を歩み始めた御夫妻に、ゆとりある大人な時間を過ごして欲しいと感じた。
外観は建主御主人のイメージから、どっしりと構えたゆとりある平屋をイメージしたが、必要スペースや予算との兼ね合いで2階建ての計画となった。しかしどうしても平屋のイメージを払拭できなかったため、道路レベルから眺めると2階の存在が消え平屋に見えるよう、また建主の希望である「大きな屋根」に見えるよう軒の出を1.5メートルとし2階部分を極力隠すこととした。
玄関はあえて敷地奥に配置しゆとりあるアプローチをイメージした。車をとめて玄関まで約20メートル、庭に一本だけ植えられたもみじを眺めながら軒下をゆっくりと歩く。合理性や利便性ばかり考えていた僕も、このような時間が贅沢だと思う年頃になった。
玄関ドアは利便性や防犯性を考慮しアルミ製の非接触キーを採用したが、このアプローチにアルミ製の玄関ドアは似合わない。そのため木製格子戸の玄関ポーチを設けその奥にアルミ製玄関ドアを配置した。
玄関ホールは照度をおとし、イサム・ノグチのペンダントライトのための空間とすることで、落ち着いた大人の空間を創造した。
2軒目の住宅が完成すると、県内に離れて暮らす娘さんたちも週末には頻繁に帰省しリビングで家族団らんを楽しんでいるようだ。