RC3階一戸建て住宅の3階LDK、2階洗面脱衣室・浴室のリノベーション。
「冬が寒くて耐えられない」というクライアントの一言からこの計画はスタートした。
このたび帰福し家業を継ぐこととなったクライアントは、高校時代まで暮らした親所有の自宅を買い取り、そこに妻と二人の子どもたちと暮らすことになった。
しかし
吹き抜けのあるリビングは冬寒く夏暑いためほとんど使われておらず、小さく間仕切られたダイニングキッチンのみで過ごす毎日が続いているという。
家の一部としての機能をはたしていないリビングは放置されていた。
『リビングを快適に使えたら暮らしはもっと豊かになる』
そう感じた私は、3階を大きなワンルームにすることを考えた。
まずは既存外部サッシを真空ガラスとし、ガス温水床暖房を床面積の7割に設置、エアコンの配置や容量を更新することで、温熱環境を整えるところから始めた。
つぎにワンルームとしたLDKではあるが、使わない部屋まで暖めたり冷やしたりすることを避けるため、必要に応じて開けたり閉じたりできる可動間仕切りを設置し、環境負荷に配慮した。
また、開けているときの可動間仕切りは存在を消し壁の一部となるよう考慮した。
キッチンについては回遊性のある形状に変更することで家族全員が集まることができ、コミュニケーションの場となるよう計画した。
リビングにただ置かれていた長さ3mのテーブルは天板の凹凸もあり避けられる存在となっていたが、工場に運び込み研磨することで凹凸をなくし、LDKの雰囲気に色調を合わせることによって家族に愛されるテーブルへと変身した。
建築設計に携わる我々が一手間加えることで、使われていなかったリビングに豊かな時間が流れ、放置されていたテーブルに愛情が与えられた。
竣工後クライアント宅に招かれた私は、そこで嬉しい話を聞いた。
様変わりした子供家族の居宅を訪れた元所有者であるクライアントの母は、子供家族に愛され少しシュッとしたテーブルを見てとても喜んでくれたそうだ。
住宅の温熱環境を整えることや家具等をリユースすることは、環境負荷軽減のために必要なことと思っている。
クライアント家族に笑顔が生まれるのと同時に、我々の母体である地球にも笑顔になってもらいたい。
そのような挑戦を続けていきたい。