三十年間にもおよぶ家族の思い出が詰め込まれたマンションの一住戸。東京で暮らす長男が婚約者を連れて帰省するとの話から今回のリノベーションは始まった。
まずやらなければならないことは思い出の整理であった。二度と見ることのない思い出いっぱいの段ボールの山を、次々と解体し自治体指定のビニル袋に詰め替えていく。
一ヶ月後、思い出たちは整理され我々はスタート地点に立った。最初はリノベーションに対して疑心暗鬼だった施主も、自宅が三十年前の姿に戻るとその価値を再認識し明るく積極的に想いを語ってくれた。
あらゆる条件の中ですべてを手に入れることは難しい。新しいものを手にいれるとき手放さなくてはならないものもある。その選択を間違えないように導くことも我々の役目なのである。我々にはその先の幸せが見えているから。